【DIARY】きもちわるい・・・。

鍵男です。

実に気持ち悪い現象を体験した。

今年、新入社員研修の講師に任命された。その瞬間、いやな想像が脳裏を走った。

新入社員研修の最終日、研修内容を発表する会が行われる。その会には、課長や部長も参加する。去年、その発表会に、前の部署の上司が出席しているのを目撃していた。つまり、僕が指導した新人達の発表の場に、その上司が出席することを意味する。

イヤすぎる。壮絶にイヤすぎる。新人研修の講師は是非やりたい。しかし、その上司は来て欲しくない。・・・少々悩んだ結果、「発表会の日に欠席すれば済む」という荒業を思いつき、新人研修の講師を引き受けた。

◆ ◆ ◆

そして、遂に新人研修最終日がやってきた。直前まで発表会に出るかどうしようか悩んだが、一応責任者ということもあり、仕方なく出席することにした・・・。

会場に着くと、案の定、前の部署の上司が居る。兎に角、一番離れた場所に着席。目立たない様に黙っていることにした。

そして、最後の1人が発表を終えた時、突然その上司が口を開いた。
「今回の研修で新たに導入したカリキュラム、とても素晴らしい。誰が導入を提案したのか?」

そのカリキュラムは僕が提案し、その内容に賛同した後輩に実施してもらったものだ。実は、その後輩は、前の部署の上司と一緒に仕事をしている。端的に言うと、「前の上司の部下に、新しいカリキュラムを実施させた」のである。
恐らくその上司は、自分の部下を褒めようとしてカリキュラムの事を出したのだろう。だから、後輩が「僕がやりました」と言うのを一瞬待った。しかし、耳には沈黙しか流れてこない。

このまま黙っていても話が進まないと思い、「僕が提案しました」と名乗り出た。一瞬狼狽する上司。明らかに「え?」という表情を浮かべ、
「この素晴らしい方法を、今後も続けて欲しい」
と言って締めくくった。

その上司の面に泥を塗った様な気分になり、後味が悪かった。

◆ ◆ ◆

数日後。
いつも、その上司と顔をあわせない様、廊下や歩く道を気を付けて過ごしていたのだが、予想外の方向からその上司がやってきて、すれ違わざるを得ない状況に陥ってしまった。すれ違った瞬間、その上司が僕の肩を「トントン」と叩き、ドキっとした。部署変更後、今までそんな事をされたことは一度も無かったし、僕に何か言うなんて、絶対考えられなかったからだ。

振り向いた僕に、彼はこう言った。
「新人研修で使った、新しいカリキュラム、とても良かった。自分の部署にも教えてあげなさい」

「・・・はい」勤めて冷静に、感情を無くした顔を向け、僕はそう答えた。

彼は僕の事を褒めたのだ。「なぜわざわざそんな事を言うのか?」話かけられた事に対する嫌悪感。「今更何を言おうが、貴様から受けた屈辱は拭えない」褒められた事に対する怒り。

まだ「部下を褒めるつもりだったのに、なぜ前が提案した」と本心を語ってくれた方がよっぽどマシだと思った。

気持ち悪くて仕方がなかった。